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退職交渉の引き止めは、「相談」ではなく「決まったことの報告」として伝えれば、ほとんど長引きません。退職交渉は、会社と条件を話し合う場ではなく、辞めることを伝える場だからです。
内定をもらっても、上司の顔を思い浮かべると気が重くなり、切り出す日を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。
- 強く引き止められたら断り切れない
- 条件を出されたら気持ちが揺れそう
- 後任がいないと言われそう
- 有給休暇を使わせてもらえるか心配
- ボーナスを減らされないか不安


私は前職で、製造業の技術者の転職支援をしていました。この記事では、退職交渉に付き添ってきた経験から、引き止めを防ぐ伝え方と返し方を、会話の例と図でお伝えします。
退職交渉は「伝える場」と考える

退職交渉という言葉には「交渉」とついていますが、実際に条件をすり合わせる場ではありません。あなたが辞めることを伝え、辞めるまでの段取りを決める場です。「話し合って決める場」だと思って臨むと、会社は引き止めの余地があると受け取ります。
相談の形で切り出すと引き止めが強まる
角が立たないようにと、相談の形で切り出す方がいますが、これは逆効果になりがちです。


相談の形だと、上司は「条件しだいで残るかもしれない」と受け取り、引き止めの話し合いが始まってしまいます。

退職日から逆算して言い切る
引き止めを防ぐ一番の方法は、日付まで決めたうえで言い切ることです。退職日、引き継ぎを終える日、有給休暇の使い方まで、一度に伝えてしまいましょう。


ここまで具体的だと、相手は「送り出す準備をしなければ」と考え始めます。退職は相談するものではなく、決まったこととして伝えるものです。入社日から逆算すると、スケジュールは次の図のようになります。

有給休暇は基本すべて使える
退職前に有給休暇をまとめて使ってよいのか、遠慮する方もいますが、残っている有給は基本的にすべて使えます。私が支援した方の多くも、引き継ぎを終えたあとは有給を使い切ってから退職していました。
ときどき、引き継ぎが終わらずに有給を残したまま辞める方もいます。有給はあなたの権利なので、残して辞めても構わないと思えるなら、それも一つの選び方です。大切なのは、「全部使える」と知ったうえで自分で決めることです。
役職者でも2〜3週間でまとまる
何度か引き止められることはあっても、辞めたいと伝えれば基本的には辞められます。私が見てきた限り、かなりの役職者の方でも、2〜3週間ほどで話がまとまることが多くありました。
引き止めを防ぐ4つの伝え方

伝える場だと心構えができたら、次は伝え方です。私が候補者の方に必ずお伝えしていたのは、いつ・誰に・何を・どう添えて伝えるかの4つです。特別な話術は要りません。
内定を承諾したらすぐに伝える
伝える順番は、内定の承諾が先、退職を伝えるのが後です。内定を承諾したら、できるだけ早く上司に伝えてください。
どうせ言うなら早いほうが気持ちも楽で、引き継ぎの期間も長くとれます。早く言ってもらえるほうが、会社にとってもありがたいのです。
最初に話すのは直属の上司
最初に伝える相手は、直属の上司です。仲のよい先輩や、話しやすい別の部署の上司に先に話すと、うわさで上司の耳に入り、関係がこじれることがあります。
そのあとは課長や部長、会社によっては役員へと話が上がり、2〜3回は話し合いの場が設けられるのが普通です。

辞める理由は前向きな言葉で
辞める理由は、会社の悪口に聞こえないよう、前向きな言葉で伝えるのが基本です。たとえば、次のような言い方です。
- 「この分野の仕事に興味があり、挑戦したい」
- 「これまでの経験を生かして、次はこういう仕事がしたい」
それでも相手は本当の理由を聞き出そうとするので、そのときは悪口にならない範囲で正直に話して構いません。
引き継ぎの段取りを添える
「まだ少し考えています」という態度を見せると、引き止めは強まります。決意が固いことは言葉で示しましょう。

お世話になった会社だからこそ、「誰に、どう引き継ぐか」を添えると、話が前に進みやすくなります。
よくある引き止めの言葉と返し方

どれだけうまく伝えても、引き止めがまったくないことはまずありません。会社は辞める理由を聞き出し、その不安を消す方向で条件を出してきます。よく見てきた3つの引き止めと返し方を、先に知っておきましょう。

「年収を上げるから残ってほしい」
一番多いのが、お金の条件です。実際に、「年収を今より100万円上げるから残ってくれ」と言われた方もいました。


金額を聞くと心が揺れるのは自然なことです。けれども、この条件には基本的に乗らないほうがいいと私は考えています。その理由は、次の章で詳しくお伝えします。
「希望の部署に異動させる」
仕事内容や勤務地が理由だと伝えると、異動を条件に出されることがあります。転勤が理由で辞めようとした方が、「その転勤を取り消す」と言われた例もありました。
ただ、その約束が本当に守られるかは誰にも分かりません。「次の会社でやりたいことが、もう決まっています」と、行き先の話で返すのがおすすめです。
「後任がいないから待ってほしい」
技術の仕事は担当者に知識がたまりやすく、「後任がいない」と言われると、責任感の強い方ほど迷いがちです。

あなたが気負う必要はありません。「入社日が決まっているので、待つことはできません。引き継ぎは責任を持ってやります」と、はっきり伝えて大丈夫です。
引き止めに乗って残った人のその後

年収アップや異動の条件を出されると、「それなら残ってもいいかも」と思うのは当然です。ただ、条件に乗って残り、その後よい状態になった方を、私はほとんど見たことがありません。理由は3つあります。


「一度辞めようとした人」と見られる
条件を上げてもらって残ると、社内では「一度辞めようとした人」という見方がついて回ります。
今までの給料は何だったのか
辞めると言っただけで年収が100万円上がるなら、今までの給料は何だったのか、という話になります。引き止めの条件は、評価し直した結果ではなく、その場で出した数字であることも多いのです。
数年後にまた転職活動をしている
もともと辞めたいと思った理由は、お金だけではなかったはずです。仕事の中身や将来への不安は、年収が上がっても消えません。
実際に、引き止めで残った方の多くは、数年後にまた転職活動をしています。条件を出されたら、「この条件で、辞めたいと思った理由は本当に消えるのか」と自分に聞いてみてください。
話し合いが長引いたときの進め方

多くの退職交渉は2〜3週間でまとまりますが、なかには話し合いを引き延ばしてくる会社もあります。そんなときは、こちらから主導して話を進めることが大切です。
こちらから日付を指定して話し合う
話し合いを先延ばしにされたら、待っていても進みません。こちらから期限を区切り、日付を指定して話し合いの場を設けてもらいましょう。

日付と時間まで具体的に出すと、相手も断りにくくなります。
切り札はメールで記録を残すこと
それでも話が進まないときの切り札が、メールで記録を残すことです。口頭で伝えただけだと、「そんな話は聞いていない」と、言った言わないの話になりかねません。
- 退職したい日付
- 口頭で伝えた日と相手
- 引き継ぎの予定
- 有給休暇を使う期間
メールは、いつ、誰に、何を伝えたかの証拠になります。話がこじれそうだと感じたら、早めに送っておくと安心です。
退職届を受け取ってもらえないとき
まれに、退職届を受け取ってもらえないという話も聞きます。ただ、法律では、期間の定めのない雇用(いわゆる正社員)の場合、退職を申し出てから2週間たてば雇用は終わるとされています(民法627条1項)。会社が認めないからといって、辞められないわけではありません。
それでも困ったときは、各地の労働局や労働基準監督署にある「総合労働相談コーナー」に無料で相談できます。とはいえ、ここまでこじれることはごくまれです。
退職交渉をひとりで抱えない方法

退職交渉のつらさは、誰にも相談できないところにもあります。エージェントを通して転職する場合は、退職交渉の進め方まで一緒に考えてもらえます。


エージェントは退職交渉の相談にも乗る
私が前職でしていたのは、退職の話が悪い方向に行かないよう、そのつど状況を教えてもらってアドバイスすることでした。話し合いのたびに、上司から何を言われたか、次はどう返すかを一緒に整理します。
伝える前の言い方を一緒に考える
上司に伝える前に、退職日の決め方や辞める理由の言い方を一緒に固めておけば、当日は落ち着いて話せます。
エージェントの選び方は、製造業の技術者に合う転職エージェントの選び方で詳しくまとめています。退職まで丁寧に付き合ってくれるかどうかも、担当者を見るポイントの一つです。
製造業の技術者ならメーカーズジョブ
これから転職活動を始める製造業の技術者の方には、メーカーズジョブをおすすめします。メーカー・製造業に特化した転職支援のサービスで、技術の仕事が分かる担当者に相談できます。
詳しい評判はメーカーズジョブの評判と向いている人にまとめています。行き先と一緒に、退職の進め方も聞いてみてください。
退職交渉の引き止めに関するFAQ

最後に、退職交渉の前によく聞かれた質問にお答えします。
ボーナス前に伝えると減らされますか
退職を伝えたことを理由に、ボーナスが減らされることは基本的にありません。支給額は何週間か前には決まっていて、あとから一人分だけ減らす手続きは実際にはかなり難しいからです。ただし、「支給日に在籍している人にだけ支給する」と決めている会社はあるので、支給日より前に辞める場合は就業規則を確かめておきましょう。
内定承諾と退職交渉はどちらが先ですか
内定の承諾が先です。承諾する前に伝えると、万一のときに行き場がなくなります。承諾したら、すぐに上司へ伝えてください。
退職は何ヶ月前に伝えればいいですか
「何ヶ月前」と考える必要はありません。内定を承諾したらすぐに伝えるので、次の会社の入社日が2ヶ月後なら、自然と2ヶ月前に伝えることになります。
転職先を聞かれたら答えるべきですか
基本的には、答えないほうが無難です。ただ、職場での関係性は人それぞれなので、話してもよいと思える相手なら伝えても構いません。話すと問題になりそう、揉めそうだと感じるなら、「まだお伝えできません」で十分です。
退職を伝えたあと職場で気まずくなりませんか
正直に言えば、ある程度は気まずくなります。これは避けようがありません。仲のよかった同僚が、まるで社外の人のように接してくる気がして、居づらく感じることもあるでしょう。

気まずいという感情は、ほとんどの場合、辞める本人だけが持っているものです。残る人にとっては仕事がこの先も続くので、辞める人のことを気にかける余裕はあまりありません。周りは思っているほど気にしていないので、最後まで普段どおりに過ごせば大丈夫です。
しつこい引き止めは違法ではないですか
引き止めること自体は、違法ではありません。ただ、退職そのものを認めないことはできません(前の章の「退職届を受け取ってもらえないとき」を参照)。
有給休暇は全部使えますか
基本的には、すべて使えます。会社は有給を取る時期をずらすよう求めることができますが、退職日より後にはずらせないため、退職前にまとめて使うことは一般的に認められています。引き継ぎの都合で残して辞めるのも、あなたが納得しているなら一つの選び方です。
退職交渉の引き止めを乗り切るまとめ

伝え方と返し方を先に決めておけば、ほとんどの引き止めは短く終わります。
- 退職交渉は交渉ではなく伝える場
- 退職日から逆算して言い切る
- 有給休暇は基本すべて使える
- 内定承諾後すぐに直属の上司へ
- 引き止めの条件には乗らない
- 長引いたら日付の指定とメールの記録
まだ転職するか迷っている段階の方は、転職したいけど動けない30代技術者の最初の一歩も読んでみてください。内定が出て伝える日が近い方は、ひとりで抱えず、退職まで付き合ってくれる担当者に相談しながら進めましょう。
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